日付の上では昨日となりますが、静岡市内で開催された同人誌即売会、静岡文学マルシェに出店いたしました。私•高森純一郎のブースは、閉場2時間前の15時頃、持ち込んだ20冊が売り切れたため、一足お先に撤収させて頂きました。当ブースにお立ち寄り下さった皆様に、御礼申し上げます。

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今回のイベントでは、ロシアケーキやビスケットなどの差し入れを頂く場面もありました。こちらについても、厚く御礼申し上げます。

昨年夏の試験開催に続き、初の本格開催となった静岡文学マルシェですが、地元の店舗やメディアと密接なコミュニケーションがなされており、地方イベントとしては極めて円滑に運営されていたように思います。

おそらくそれは、今回のイベントの運営の方々が、スノドカフェ七間町という、地域に根差した協力者を得たことも大きいのかもしれません。この度の出店のため、静岡県庁近くの宿に泊まったおり、宿のスタッフの方から伺ったのですが、今回の前夜祭会場ともなった同カフェは、地元の方々から大変親しまれ、愛されているのだそうです。

静岡、浜松と、日本全体で見れば決して小さくない都市圏を抱えており、文芸関連のイベントに対する「需要」も相応に有している静岡県ですが、これまで三大都市圏の中に埋没し、イベントの「供給」は不充分で、イベントにも馴染みのないところがあったのかもしれません。こうした事情もあってか、運営の方々は「即売会の初心者も入っていきやすい雰囲気作り」に心を砕いていらっしゃいましたが、入り口近くのブースで見ていた限りでは、そうした努力はかなりの程度、奏効していたのではないかと思います。文芸関連のポテンシャルが小さくない地域だけに、今後、このイベントが継続し、未だ潜在している静岡の文芸の可能性を顕在化させていければと願っています。

次回の私の即売会出店は5月7日の文学フリマ東京、その次は5月21日のCOMIC CITY 福岡です。多くの方のお越しをお待ちしています。

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なお、今回の静岡訪問では、イベントに先立ち、20年ぶりに大井川鐵道のSL急行にも乗りました。

イギリスやオーストラリアなどへ行くと、蒸気機関車の保存が「産業遺産の保護」と認められ、有志の寄付を集めている場面をよく目にします。しかし、同地を走るSL列車は、民間企業、それも、経営基盤の脆弱な地方私鉄によって支えられています。

そうした条件下で、40年にわたって蒸気機関車を運行しているというのは、まさに超人的な努力の賜物といっても過言ではないのですが、やはり過疎地域を走る大井川本線の運営は厳しく、現在同社は地域との一層の連携を模索しつつ、経営再建中。こちらも、地域の潜在可能性が顕在化すれば...と願わずにはいられませんでした。
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2017.02.13 / Top↑
2月12日に静岡市で開催される同人誌即売会・静岡文学マルシェに出店します。

私・高森のブース番号は「あ-03」となっております。

今回のイベントでは、著者の本業との兼ね合い(今年の春に職位が変わる予定で、新たに担当する業務を複数抱えています)から、ポストカードの作成など各種企画への参加を見送らせて頂いておりますが、これまでに御好評を頂いている既刊として、以下の2作品を販売します。「あ-03」ブースへお立ち寄りの際は、お手に取って頂ければと思います。

ちなみに、今年の新刊は現在22万字余り書いた状況です。引き続き、5月7日の文学フリマ東京での頒布を目指して書き進めていきますので、覚えておいていただけますと幸いです。


『大陸と海洋の交差路』(2016年作)…頒布価格:500円
那覇を訪れた香港の文化人類学者・唐瑞延は、これまで自身の沖縄での研究活動を支えてきてくれた台湾出身の恩人・安麗生の職場を訪ねる。台湾政府の意向を受け、長年台湾と沖縄の交流事業に携わってきた麗生は、定年を迎えたこともあり、所属する政府系機関を退職することになっていた。
長年に渡る学恩に礼を言い、また麗生の日台交流への尽力をねぎらう瑞延。そんな彼に麗生は、「これは回顧録にも書かなかったことなのだけれど…」と、ある秘密を打ち明けた。曰く、台湾人として沖縄との民間交流を深めてきたはずの彼女は、実は沖縄本島で、沖縄県民として生まれたのだという。なぜ、沖縄県民として生まれた人物が、台湾人になったのか。その疑問を抱いた瑞延に、麗生は「台湾疎開のことは、御存知かしら?」と問いかける…。
太平洋戦争末期、1万人を超える沖縄県民が、当時日本領であった台湾へと疎開しました。しかし終戦後、彼らの疎開先は中国国民党の支配下に入り、そして彼らの故郷・沖縄はアメリカ軍の支配下に入ります。疎開先も、そして故郷も「日本」ではなくなった日本人疎開民。やがて彼らは米軍支配下の沖縄へ、すなわち中国からアメリカへ「帰る」ことになります。
戦中から戦後にかけての沖縄を、台湾の視点から描いた作品です。

『疎遠なる同胞』(2011年作)…頒布価格:500円
インドシナに派兵された韓国軍によって両親を殺されたベトナム人少女。身の危険を感じた彼女は、当時の南ベトナム首都・サイゴンへと逃れるも、避難先で食いつないでいくため、韓国人従軍記者に雇われ、この記者の下で生活することとなる。やがて、共産軍が南へ侵攻、サイゴン陥落が目前に迫った段階で彼女は…。
外国人の兵士に肉親を殺され、他方同じ国の記者と暮らすことで生き延びた少女の視点から、戦争最末期のベトナムを描き出します。国籍やエスニシティ、或いは国民性といったフィルターを介して世界を見ることの危うさを感じて頂ければ幸いです。


なお、私は12日の文学マルシェ本体に先立ち、11日午前中に静岡入りし、大井川鉄道で21年ぶりに蒸気機関車が牽引する列車に乗るほか、文学マルシェの前夜祭にも参加する予定です。静岡の観光資源にも触れつつ、多くのサークルさんとの交流ができることを楽しみにしております。
2017.02.06 / Top↑
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昨日までの3日間、研究資料の収集のために韓国へ行っておりました。

今回の訪韓では、

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これまでに何度も利用しているソウルの国会図書館に加え、

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行政首都•世宗特別自治市にある国立世宗図書館でも文献の閲覧、コピーを行ってきました。

世宗市とは、盧武鉉元大統領の時代に中央省庁の大部分を首都圏以外へ移転させ、ソウルへの一極集中を緩和させるという名目で建設が決定された計画都市。都市名はハングルを作ったことで知られ、10000ウォン札にも描かれている世宗王にちなんでいます。

李明博前大統領下の2012年、ソウルの南方130kmの地点に設置された同市ですが、その設立経緯上、中央省庁以外には「何もない」場所で、私も、今回、政策資料を集めるという目的で初めて訪れました。

ちなみに、計画都市だけにソウル都心からのアクセスは良く、今回私が利用したKTX(上の写真の高速列車)とBRTの乗り継ぎで所要約1時間。高速バスでも2時間あまりだそうです。

で、その世宗市中心部の街並みがこちら↓

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近未来的な外見の、政府官庁の庁舎ばかりが並んでいます。

ここまで計画性が徹底しており、かつ建設から日の浅い都市は世界的にもあまり例がないので、雑然としたソウルとの対比(とはいっても、ソウルも16,7年前とは比較にならないほどきれいな街になりましたが...)という点では、見ていて楽しい街でした。

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歴代大統領に関する文物を展示した「大統領記録館」という施設もありますので、韓国の近現代史に興味のある方は、一度足を運ばれてみるのもいいでしょう。

なお、周知の通り、現在の韓国は、憲法裁判所で弾劾裁判が行われているため、朴槿恵大統領の権限が停止されています。私は13年前に行われた前回の弾劾裁判の際も、釜山外国語大学校と東国大学校のお世話になる形で韓国に滞在していたのですが、当時は盧武鉉の国政復帰を求める声が随所で聞かれたのに対し、今回、世論は朴槿恵を完全に見限り、次の大統領選びに意識を向けています。

無論、政治指導者の必須条件である社交性と学習能力が、朴槿恵に決定的に欠けていたことは否定できません。ただ、この2つのスキルに欠けていた点では、彼女の前任者も、前々任者も、あまり大きくは変わりません。大統領として成長していくという謙虚さに欠いていた点では、李明博も、盧武鉉も似たところがありました。

それは、根本のところでは、単に彼らに政治家としての成長能力・努力が足りなかったというだけではなく、大統領に就任当初から完全無欠なスーパーマンたることを期待するこの国の世論の反映でもあります。

しかし、民主主義国家において行政の指導者とは、有権者から権力を付託される存在。指導者は円滑な法の執行のため、絶えず学習することが要求されますし、他方で有権者は、自分たちの多数代表として選んだ人物を、絶えず育てる責任があります。

President can grow up, even if he or she is a stupid one.(大統領は成長しうる、たとえそれが、愚かな大統領であったとしても)

これは、私が学部3年生の時、英語のディスカッション•スキルを磨く授業で担当教員が私に言った言葉です。時は2004年11月、アメリカ大統領選挙で、W. ブッシュが再選された直後のこと。コロンビア大学出身の生粋のニューヨーカーにして、バリバリの民主党員だった彼に選挙結果の話題を振ったところ、彼はそう答えました。

政治家といえども人間です。完全無欠などということはあり得ません。なればこそ、絶えず成長しようという努力は必須ですし、有権者も権力者を育てようという努力を払わなければならないのです。

次期大統領が誰になるにせよ、政治家を含む有権者の多くがこの点を直視しない限り、韓国政治は将来、再び似たような混乱に陥る。そしてそれは、やもすれば大統領や首相にリーダーではなくボスたることを期待してしまう諸外国の有権者にとっても、決して他人事ではない。...今回の訪韓を終えた後、東京へ戻る機内で私は、そんな思いを抱きました。
2017.02.04 / Top↑
来月(2月)の後半、メリーランド州ボルティモアで開かれるISA(International Studies Association)という学術団体の第57回年次大会で研究発表を行うため、訪米します。

私は本来、東アジア、中でも韓国の政治を専門としており、大学院生の時に留学した先も韓国だったのですが、今年は2月にボルティモア、12月にロサンゼルスで学会発表を行うほか、所属先が行っているコネティカット州の大学との交流プログラムにも従事するなど、例年になくアメリカの学術機関と深く関わることになっています。

さしあたり現在は、ボルティモアでの研究発表に向け、発表用資料を作成し終えたところ。

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発表用のパワーポイント・テキスト。室内を暗くしても見やすいデザインにしたのですが、よく考えたら、農業政策についての発表で雪をイメージしたデザインというのは変ですね…。

さて、日本時間の今朝、そのボルティモアでの学会を主宰するISAから、現職・次期・前職の会長、および事務局長の連名で以下のようなメールが届きました。

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ISAは、国際関係や国際開発の分野では北米最大の学術団体。その年次大会には、世界中から参加者が集まります。そうした会議だけに、今回、米新政権が施行したイスラム圏7か国に対する入国制限措置に関して、「多くの問い合わせを頂いています」とのこと。

この件についてISAは、「今回の措置で会議に出席できなくなった方には参加登録料(※)を全額払い戻し、かつ、次年度以降の大会でも、出席キャンセルに伴うペナルティを一切課しません」とした上で、以下のように綴っています。
(※=学術研究の業界では、国際会議に出席する場合、通常200から300USドル程度の参加登録料を払うのが万国共通なのですが、大抵の場合、その登録料は返金不可と設定されています)

「今回のアメリカ政府の措置に抗議すべく、会議をボイコットすべきとの意見もありますが、会議は通常通り開催します。それは、我々が政治的に中立な非営利団体であるためであり、また、今回の政府の措置についても、会議の席で議論して頂きたいからです」(要約)

私自身は、今回アメリカ政府がムスリムを多く抱える国を名指ししてとった措置は、これまで欧米諸国が払ってきた「『テロとの戦い』を、絶対に『ムスリムとの戦い』に転嫁してしまわない」という努力を踏みにじるものであると考えています。

近年、相次いでISのテロ攻撃を受けた中にあって、フランス政府首脳陣が「我々はテロリストと戦うのであって、ムスリムを敵とするのではない」と明言したことと対比させれば、今回のアメリカ連邦政府の措置が、80年以上も前の、そして弱小国家であったからこそ許された孤立主義へと回帰する、あまりに無責任な行動であることは明らかです。

まさに、上述した私の見解がそうであるように、民主主義社会では、ある極端な意見が出ると、必ずそれに対する反論が出ます。その時、両者を議論させる場を提供することも、アカデミズムの仕事の一つ。ISAは今回、その仕事を忠実にこなす用意があると表明した形です。

アカデミズムは、直接的に物やサービスといった付加価値を生み出す要素が希薄な業界です。それだけにこの業界は、研究上の蓄積や、研究者が持つ見識、あるいは新たな発見を社会に還元し、そしてそれらについて多くの人々が「考える機会を提供」することに主たる存在意義があるのですが、今回、国際関係・国際開発の分野で北米最大となる学術団体がそのアカデミズムにおけるプロ意識を見せたことに私は、一種の「若さ」ゆえに時に迷走するものの、やはりアメリカには「脈がある」と強く感じました。
2017.01.30 / Top↑
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昨日から明日までの3日間、沖縄を訪れております。一週間前に北海道のアイヌ文化施設を訪れたのと同様、来年度の担当授業で「アジアの文化的、民族的マイノリティ」に触れることを想定した準備の一環です。

鹿児島以北と異なる文化的特徴を持つ沖縄は、北海道と同様、国境とアイデンティティの境界が一致しないことを示す端的な例。そのことを踏まえつつ、昨年10月に続き、3ヶ月ぶり通算5回目の沖縄入りとなったのですが、私にとって当地は、昨年刊行の拙作『大陸と海洋の交差路』で主題とした場所であり、(決して詳しいとは言えませんが)アイヌに比べれば多少は馴染みのある場所。そういった事情もあり、今回は「宗教文化」に焦点を絞りこみ、那覇周辺を見て回りました。

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こちらは、観光地として超定番であり、私も拙作の舞台として登場させた首里城公園にある、園比嘉武御嶽(そのひゃんうたき)という祈祷施設。琉球王国の時代、国王や官吏、あるいは農民までもが、こうした御嶽(うたき)と呼ばれる施設で祈祷を行い、生活や旅行の安全を願うという土着の信仰を持っていたのだそうです。

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他方、周知のように琉球王国は日中双方と交易を行っていました。その中で仏教と神道も国王によって取り入れられ、太平洋戦争中の破壊とその後の再建を経て、今でも沖縄本島には複数の神社が建てられています。写真の神社は、那覇市立病院の近くにある末吉宮という神社。石垣などに沖縄独特の建築様式が見られますが、拝所が定められ、賽銭箱も置かれた、れっきとした神社です。

このように、沖縄では、本州や九州以上に様々な信仰の対象が合わさった、独自の宗教文化を発達させてきたところがあります。こうした切り口からも、一つの国の中に複数の言語や宗教、エスニシティが共存することはむしろ常識だということは指摘できるかもしれません。(ちなみに、宗教アイデンティティに関して言えば、私自身も、プロテスタント教徒と、日本国内ではマイノリティに属します)

何度足を運んでも興味関心の尽きない沖縄。明日午前那覇発のフライトで東京に戻る予定ですが、いずれまた、遠からずして那覇行きの航空券を買うことになると思います。

なお、本記事で言及した『大陸と海洋の交差』は、2月12日に静岡市で開かれる即売会、静岡文学マルシェでも販売する予定です。同イベントに参加予定でご関心のある方は、お手にとっていただけますと幸いです。
2017.01.25 / Top↑