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先月半ばにドバイで行った取材を踏まえ、目下、新しい小説を書いています。現状では4万字弱、全体の2割程度を書いたに過ぎない段階ですが、アラビア半島の土地柄ゆえか、自分の書く小説の中では比較的穏やかに序盤が展開している…と、著者本人としては感じています。

ちなみに、今書いている作品の「その次」についても、アウトラインの作成と下調べを進めています。次々回作となる長編小説はカンボジア、それも、1970年代後半のプノンペンが舞台となります。来春以降の現地取材の結果にもよりますが、ドバイを舞台とした作品に比べ、激しい物語の展開となる予定です。

これらの作品については、追ってアナウンスしていきますので、記憶に留めておいていただけると幸いです。

さて、11月4日に開催される第十七回文学フリマについても、出店準備が着々と進んでおります。

高森純一郎のブース番号は『2階・イ-12』。先日のタトホンと同様、以下の3作品を頒布します。


『近しき異邦人』(2013年作)…頒布価格:400円
1975年、両親に連れられて陥落直前のサイゴンから国外へと脱出したベトナム人少年は、乗り込んだ船の漂流した先・タイへと住み着くこととなった。その後彼は、国王を頂点とする統治構造が根を張り、同質化の進められたタイ社会を生き抜く中で、「祖国」や「同胞」という言葉に内在する虚構性に気付いていく。やがてバンコクでビジネスの成功を収め、慈善事業の一環として難民支援に資金を拠出する機会が巡ってきた折、彼は自らの拠出する資金の使途に、一つの「条件」をつけることとなった。その「条件とは」…。
ベトナム戦争からカンボジア内戦の時期にかけて、膨大な難民を受け入れることになったタイ。同国に住み着いた異邦人の視点から、タイ社会と、20世紀後半のインドシナを振り返ります。


『共和国の貴族』(2012年作)…頒布価格:500円
1980年代半ば、アジア開発銀行へ出向した大蔵官僚・日野は、赴任先のフィリピン・マニラで大統領マルコスの強権的支配と、それに抵抗する民衆の抗議運動に直面する。現地で発展途上国の開発支援に従事していた日野は、しかしルソン島中南部の港湾都市でとある未亡人と出会ったことにより、ダイナミックな政治変動が重要な問題を置き去りにしたまま進行していることを気にかけるようになる…。
「民主主義=善、独裁=悪」という単純な図式は、時に発展途上国を見る目を誤らせてしまう。そうした陥穽を、中年男性と母子の関わりを軸にして物語化しました。


『赤道直下の海峡』(2009年作/2013年改訂)…頒布価格:300円
2008年、長期在外研究のためにシンガポールへやってきた若手政治学者・高木は、現地の友人から、「アルファというインドネシア人女性が君に会いたがっている」と聞かされる。友人の話を聞いた彼は、すぐに「アルファ」なる女性に連絡をとった。彼女の存在、そして彼女との再会は、高木に10年前、交換留学生としてシンガポールで4か月を過ごしたことを思い出させる。1998年の半ばに彼は、ふとしたことでこのインドネシア人女性と出会い、そして当時インドネシア全土を駆け巡った激震、すなわち同国の民主化と縁を持つようになったのである…。
独裁者を追放するにはあまりにも無力な、しかし可能な限り自分たちの力でやれることをやろうとする無名の闘士たちの姿を物語にしつつ、彼らの力だけではどうにもならない東南アジアの貧困とエスニシティをめぐる現実をも描きました。


多くの方のお越しをお待ちしております。
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2013.10.25 / Top↑
先日の台風26号は、太平洋沿岸を中心とする各地に大きな影響を与えました。特に、伊豆大島での被害が甚大であったことは、多くの方が既にメディアを通じてご存知かと思います。この度の自然災害で亡くなられた方々のご冥福を、一クリスチャンとして祈ります。

台風が関東に接近した16日から17日にかけて、私は松山を訪れる予定だったのですが、斯様な状況だったので、利用予定だったジェットスターは欠航。旅行は中止となりました。

だいぶ先ですが、四国には来春、機会を改めて足を運ぶことにしました(先ほど、欠航に伴って払い戻されたバウチャーを、来年3月の高松行きの航空券に引き換えました)。

さて、この数日ほどの間にタトホンで購入した本を読んだので、以下、その感想を記したいと思います。


少年憧結社猫(少年憧憬社文学結社猫)『猫少年二篇』

2つのサークルさんが合同で出された作品集で、表題が示す通り、短編小説が2本収録されています。

文学結社猫・山本清風さんの作品は、消化不良な日々を過ごすOLの日常に、ポケット大の猫(と犬)が添えられたお話。倦怠感あふれるOLの会社での日々が、軽快な言葉遊びを用いて綴られる興味深い作品でした。

少年憧憬社・栗山慎太朗さんの作品は、銃口が火を噴く重い作品。上記山本さんの作品とは対照的に、重苦しい説明口調の叙述が文中で高い比率を占めています。が、事実関係が叙述され、物語の各々の場面が緻密に描写される一方、その背景となる世界観に関する説明はあまりなされず、読者が物語の背景をあまり理解することなく、しかし他方でその展開を理解するよう作り込まれています。

毛並みの大きく異なる両作品ですが、各々の作者が工夫を凝らし、少ない字数の中に自分のアイディアを込めている点は共通していました。


シアワセモノマニア『幸福遊戯狂―シアワセゲエムマニア―』

無料頒布されていた、小説書きでありゲーム好きでもある著者による、ゲームに関するエッセイ集です。

実は私は子供の頃、マンガとゲームにあまり親しんだ覚えがありません。恐らく、

マンガ→全巻買い揃えるお金がない(小学生の頃から時刻表を「愛読誌」と言い切る旅行好きだったので、お小遣いは一人旅の電車賃にばかり充てていました)
ゲーム→反射神経が鈍いのでRPG以外やりたがらない(逆に、ストーリー性のあるFFシリーズは大好きでした)

という理由によるものなのでしょう。屋外で遊ぶのも好きではなかったので、連日地元の市立図書館にこもり、閉館時刻10分前に館内放送で名曲・パッヘルベルのカノンが流れるまで鉄道雑誌や小説を読み耽っていました(それから20年弱が経った今、私はその場所を大学図書館に移し、やはり閉館放送であるパッヘルベルのカノンが流れるまで研究資料を読み耽っています…)。

そういう事情もあるので、ゲーム好きな人の考えをのぞいてみる、といった感覚でこのエッセイを読んでいたのですが、「創作物は作者とイコールなのか」という問いに考えを巡らせている部分は、二度ほど読み返しました。

著者も指摘するように、上の問いは、創作に関わる人間であればたいてい一度はぶつかる壁です。

私の場合、この壁を巡る問いは「自分の小説の主人公は、著者の抱える制約をどこまで超えられるか」という点に集約されてきました。

現時点での私は、自分の書く小説の世界観やその登場人物が、「作者の日常的な行動半径や諸々の才能」を超えた広がりを持つことは可能だと思っています。しかし同時に私は、自分の小説は「作者の認識の及ぶ範囲」を超越することはできないとも思っています。

自分の手の届く範囲を超越した物語を創作することはできるが、自分の知性・認識をも超越した物語は作ることができない、ということです。

もとより、創作に関わるということは、現在の自分を規定している様々な要因(制約)から自由でなければならない、ということを必ずしも意味しません。

作者が投影された創作物があってもいいし、作者の実体から大きく乖離した創作物があってもいい。

このエッセイの著者も、創作物と著者の距離関係に、唯一の正解を求めてはいません。むしろ著者は、創作されたものが「誰かに届く」ことに重きを置く旨を記しています。

勿論、形あるものを作り上げる以上、それがどういうものであるか、こだわりを持つことは重要なことです。しかしそれ以前の段階で、作り上げたものを他人に届けようという意思がなければクリエイティブな活動は成立しません。

私は政治学という学術研究を生業にしている人間ですが、この業界でも研究内容を「発表・発刊する意思」の強さは大きく物を言います。自らの取り組みを外の世界に出し、それを他人と共に検討することなしには、自らの知見をより社会に貢献できるものへと発展させることはできないのですから。

表現媒体が違えど、創作活動を試みる人間の意識には共通するものがあるということを、改めて考えた一冊でした。
2013.10.19 / Top↑
昨日(10月6日)、東京・浜松町の都立産業貿易センターで開催された即売会『タトホン8』が無事に終了しました。

主催のテツイヌさんが切り盛りされ、クイズやペーパーラジオの作成・配布など、まさにお祭り要素が数多く含まれた『タトホン/タトコン』。

公式サイトにもあったように、「即売会」というよりも「創作に関わる人の交流・お祭り」という趣旨が前面に出たイベントでした。大変楽しいイベントでしたが、残念ながら『タトホン/タトコン』は今回の開催が最後になるとのこと。私・高森にとっては今回が最初で最後の出店参加ということになってしまいましたが、主催の方の「創作」に対する思い(+各出店者の主催者への信頼)はよく伝わりました。

テツイヌさん、『タトホン/タトコン』、おつかれさまでした。

私・高森のブースにお越しくださった方、ありがとうございました。当ブースは、おかげさまでタイのインドシナ難民を描いた最新作『近しき異邦人』が、持ち込み分完売となりました。(11月4日の文学フリマ出品分は控えがあります)。

さて、今回のイベントでも、他サークルさんの作品を何点か購入させて頂きました。これらの感想については、後日記事に書きたいと思います。

<おまけ>

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上述のペーパーラジオに貼り付けさせていただいた、私の書き込みです。ご参考までに…(3行目の「즐거운 행사 되세요!!」は「楽しいイベントになりますように!!」という意味です)。
2013.10.07 / Top↑