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昨日、フィリピン・マニラにあるアメリカ軍墓地を訪問しました。

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第二次世界大戦のフィリピン地上戦で亡くなったアメリカ軍兵士、およびフィリピン軍属が眠る墓地です。

実は、マニラが位置するルソン島は、大戦中に私の祖父が日本軍兵士として赴いた土地。話し下手な性格だったこともあってか、祖父は孫である私に出征先でのことを詳しく語らぬまま世を去りましたが、この墓地に眠る兵士の中には、祖父と戦った人々も含まれているかもしれません。

70年前の当地に思いを馳せつつ、また曲がりなりにもクリスチャンである者として、記念碑の下に設けられた芳名録には、

I pray for all those whom my grandfather, an ex-Japanese soldier in the Philippines, fought.
(かつて、我が祖父が日本軍兵士としてフィリピンで戦った全ての者たちの為に、祈りを捧げる)

と記帳しました。

閑話休題。

今月初めの第4回福岡ポエイチで購入した本のうち、以下2点、感想を記したいと思います。


『文芸同人誌 さきがけ 第4号』さきがけ文学会(Website: http://www.sakigake.in/)

福岡出身の社会人によって構成・運営されている文芸サークル『さきがけ文学会』が発行する、詩や短歌、小説などの作品集。以前発行された分も含め、この『さきがけ』は4号全て購入し、読ませていただいております。

さきがけ文学会さんが出される作品集は、この種の同人誌が陥りがちな「没個性化」を上手く回避しているのがポイント。

同郷の者同士、或いは同じ学校の出身者同士で組むサークルが同人誌や論文集を出すと、よほど明確なテーマ設定をしない限り、「書き手たちのバックグラウンドには特徴があるが、作品集自体には個性がない」ということになりがちです。それ故、個々の作品に面白いものがあっても、それが雑然とした全体の構成の中に埋没してしまい、読み手の記憶に残らない。こうした点が原因で、なかなかリピーターがつかないサークルも多いと聞きます。私自身、学部生の頃、サークル(ちなみに私は「政治研究会」に所属していました)機関誌の編集長をやっていて、似たような課題に直面していました。きちんと査読をせず、適当に原稿を集めていると、ジャンクばかりを寄せ集めた論文集になってしまう…。

この点、さきがけ文学会さんの作品集は、「短歌しりとり」や「発想練習」などで、書き手が創作を楽しみつつ、読み手をきちんと楽しませる作りになっています。特に、「風が吹けば〜桶屋が儲かる」の「〜」の部分を独自に捻ってみる「発想練習」は、毎回楽しく読ませていただいています。

加えて、転勤や育児といった書き手の日常が、エッセイなどの形で作品中に取り込まれているのも、読み手に面白いと思わせてくれるポイントです。後半に掲載されている育児エッセイは、ここ数年、育児に悪戦苦闘する友人を間近で見てきたこともあり、読んでいて思わず笑ってしまいました。

社会人として各地で活躍しながら創作を続けることは大変でしょうが、今後とも無理のない範囲で活動を続けていただければと思います。


大地柳子『不器用者達の恋愛事情①』白山荘

防衛隊(≒自衛隊)を舞台として、題名通りそこに所属する隊員達の恋愛事情を描いた長編。今回のポエイチでは、その第1巻が頒布されていました。

軍隊という会社社会から隔離された、しかし他方で独自の社会を成している場において、どのような人間関係やドラマが展開されるのかは、物語の書き手としては非常に興味のあるところです。とりわけ、現代の日本で暮らしていると、軍人や自衛官の経験者と親密になることが少ないため、そうした興味は一層引き立てられるのかもしれません。

即売会界隈における軍人を描いた小説といえば、何と言っても大和雪原の神風零さんが書かれた『桜花』シリーズが傑作ですが、自衛官経験者の著者による『桜花』が軍人を描くことを主目的としているのに対し、こちらは自衛官向け雑誌に掲載されているお見合の案内などを引き合いに出しつつ、彼らの男女関係を描くもの。

軍人といえども人間ですから、職場恋愛もするし、結婚もします。ただ、いかんせん、軍隊という組織はお世辞にも職場恋愛に向いた場ではないし、また彼ら軍人は、決して恋愛慣れしているとは言えない人々。そんな中で男女の関係がどう生まれていくのか…。今回頒布されていた第1巻は話のイントロというべきパートであり、具体的展開は第2巻以降に持ち越されているので、現時点で断定的な評価はできませんが、テーマとしては面白く、可能性が多分にあるといえるでしょう。

個人的には、軍隊生活でのエピソードの類いは、韓国留学中に非常によく聞かされたところもあるので、それらエピソードとも照らし合わせながら、続編を読んでいきたいと思っています。
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2015.06.29 / Top↑
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昨日、新宿近くの新国立劇場で同劇場バレエ団の公演「白鳥の湖」を鑑賞してきました。

バレエ作品の王道ともいうべき「白鳥の湖」には、ハッピーとアンハッピー、2種類のエンディングがあり、今回の公演で採用されたエンディングは王子がオデットと無事に結ばれるハッピーエンド。

正直なところ、劇場入口で渡されたあらすじとキャスト一覧表を見た時は「ふーん、今回はハッピーエンドなんだ」ぐらいに思っていたのですが…いざ開演し、最終幕まで来ると、舞台上の世界へと完全に引き込まれてしまいました。

舞台芸術にしても、長編小説にしても、本当に完成度の高い作品とは、オーディエンスを話の世界へと引き込んでいくもの。演目が王道中の王道というべきものであっただけに、今回は、我が国最高水準のバレエ団の真骨頂を目にする素晴らしい機会となりました。

前置きが長くなりました。先日開催された即売会・第4回福岡ポエイチで購入もしくは頂いた作品の感想を、以下に記していきたいと思います。


夏野雨『みずのうつわ』

ポエイチ参加者にとってはお馴染み、同イベントのコーディネーターである夏野雨さんの詩集です。

夏野さんの詩や小説は、日常の風景をソフトタッチな言葉を紡ぐことで巧みに描き出しているのが特徴。柔らかな言葉を厳選し、それを紡ぐものなので、読み終えた後に浮揚感に浸れます。上述したバレエと同じで、読み手を作品の世界に招き入れるんですね。

決して長くはない、むしろ短い言葉を読み進める中で、作品の世界にすんなりと入っていってしまうところに、作者がいかに言葉を厳選しているかが伺えます。

私が気に入ったのは、前半に収録されている「ささごと」。

誕生日の真夜中に、弟と父から電話がかかってきて、「誕生日おめでとう」などとは決して言わないのだけど、ちょっとしておふざけのやりとりをするうち、コミュニケートができてしまうというもの。

柔らかな言葉を紡ぐものでありながら(むしろ、柔らかな言葉で紡がれるがゆえ)、日本人男性の言動にしばしば付きまとう「幼稚さ」も浮き彫りにしてしまうところもある。そんな秀逸な作品です。


岸かの子『五行歌てとしゃん その弐』

昨年の第3回ポエイチでお隣さんだった岸かの子さんの五行歌集。

昨年岸さんから教えて頂いたところでは「五行歌=五行で綴られた、一息に読める程度の長さを目安とした歌」であったと記憶しています。

今回の作品集『その弐』は、亡き母親を巡る思いを、娘の観点から綴った歌を中心に、5作品を収録したもの。

いずれも、切なさを感じる間もなく時間が経過し、かつては「育てられていた身」が「育てる身」へと移っていく過程を感じさせる作品です。読み終えた後は、しばし感傷的な余韻に浸れます。

個人的に気に入ったのは「白衣を着た金木犀」。庭先(?)の金木犀に「おかえり」と迎えられていた子供の視点から始まるも、綴り手が巧みに言葉を操り、それを回顧する視点へとシフトしていきます。そして、今度は自分が「おかえり」と言う立場になるまでを、幾分かの苦みを含んだ描写を織り交ぜながらまとめ上げていきます。


今回のポエイチでは、これら以外にもたくさんの作品を購入しました。

現時点ではそれらをじっくりと読むに至っていないのですが、今月末から来月初頭にかけて東南アジア訪問を予定しており、その際に未読の作品を「旅のお供」として携行するつもりです。(ちなみに、エンターテイメント・サービスがないLCC機内での時間を読書に充てると、恐ろしいほどに本を読み進めることができます)

そういった事情のため、しばし時間を空けてしまうことにはなりますが、ポエイチで購入した作品については、上記2つ以外のものも、今後、感想をブログに書いていきたいと思っております。
2015.06.15 / Top↑
6月6日・7日と福岡市で開催された同人誌即売会・第4回福岡ポエイチが、盛会のうち、無事終了しました。

私・高森のブースは、1日目の開始1時間の時点で

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これぐらい残っていた持ち込み分が、2日目の開始30分の時点で

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これぐらいになり、2日目閉場30分前の時点で完売いたしました。(ちなみに上の写真は、いずれもポエイチ実行委員会の方がツイッターでのブース紹介用に撮って下さったものです)

1日目の夜、過去のポエイチでお世話になった方が「高森の本は今年も完売すると思う」と仰っていましたが、その通りの結果となりました。

大変ありがたいことに、年々、リピーターとして拙作をご購入下さる方が増加傾向にあります。特に今年の新作『異邦人の土地』は、カンボジア内戦という取っ付きにくいテーマ、そして50万字以上(文庫本換算1000ページ以上)という分量にもかかわらず、4月の文学フリマ金沢ではリピーターの方を中心に開場5分で4冊が売れ、今回のポエイチでも同じくリピーターの方を中心に1日目で品切れとなる好調ぶりでした。

ご愛顧下さっている皆様、本当にありがとうございます。

勿論、今回初めて拙作をご購入下さった方々にも、心から御礼申し上げます。

海外と深く関わる職業に従事する者として、今後ともエンターテイメント性あふれる、しかし読み手の方々を着実に国際的な視座へといざなう小説を書き続けていきたいと思っています。引き続き、ご愛顧いただけますと幸いです。

また、毎年ポエイチを開催して下さる実行委員会の皆様にも感謝申し上げます。

詩や短歌、俳句に関わっている実行委員会の方々が、小説にも門戸を開いた場を提供して下さることは、私にとっては作品頒布の機会になっていると同時に、詩歌に触れる貴重な機会ともなっています。重ねて御礼申し上げます。

福岡では今年、10月25日に「第一回文学フリマ福岡」も予定されています。私も、この福岡初の文学フリマには(これに先立つ9月20日の「第三回文学フリマ大阪」に続く形で)出店申請するつもりでおりますが、こちらもポエイチ同様、盛会となるよう祈っております。

なお、今回のポエイチでは、他サークルさんの詩集や歌集を数多く買いました。これらの感想については、後日改めて記事にしたいと思います。
2015.06.08 / Top↑
昨日・4日早朝から今日・5日夜までの日程で、香港に来ています。

このところ本業の方が慌しかったりするのですが(今年10月に博士論文の提出を予定しており、その関連作業に追われています)、そうした中、敢えてこの日程で訪港したのは他でもなく、

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天安門事件の犠牲者追悼集会をこの目で見るためです。

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昨年11月にも当地を訪れた私は、その際、香港政府の選挙制度改革に抗議し、アドミラルティで路上占拠活動を展開する学生たちの姿を目の当たりにしました。

東アジア政治を専門とし、主に韓国で民主化運動の元・闘士だった人々と多く接する私にとって、現在進行形の民主化闘争は大変に印象強く、1980年代のソウルやマニラでも同様の光景が展開されたのかと思うと、感慨深いものがありました。

そうしたこともあり、毎年6月4日にビクトリア・パークで行われ、諸外国にもよく知られるこの追悼集会を自分の目で見てきた次第です。

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参加者の多くは学生なのですが、中には事件当時学生だったのだろう40代と思しき方々もいて、26年という時間の経過を実感させられます。

私自身は、いわゆる開発独裁の研究を生業にしていることもあり、大衆民主主義に対して極めて懐疑的です。むしろ、18世紀後半にアメリカ建国の父たちが、或いは19世紀後半に明治新政府の指導者たちが展望したように、大衆に媚びることなく、より安定的かつより持続的な立憲政治を行うことが、貧困を一層削減し、より豊かな社会を構築する基礎になると考えています。

無論、それは中国も例外ではなく、仮に中国共産党の一党優位体制を変革したところで、中国の民生が向上するとは限りません。少数民族問題が民主化によって却って顕在化することは世界各地で証明済みですし、民族主義に根ざした膨張主義的な対外行動も、同様に民主化で解決する問題ではありません

ですから私は、時に過度な理想を求める香港の学生や民主派に、危うさを感じるところもあります。

しかし民主主義は、上述のように善政を約束するものではありませんが、執政者が無能ないし有害な時に、それを交代させることができるという、制度的保険としては機能します。

そして、この集会のように執政者への異議申し立てがなされることは、不寛容ないし視野狭隘な執政者に対しては、現実を突き付けることにつながります。

「他の政治体制と比較しなければ、民主主義は最悪の政治体制」と言われる所以です。

イギリス時代は「政治なき都市」とも言われた香港ですが、私にとってこの都市は、東西の諸要素が入り混じった魅惑の町であると同時に、民主主義をより深く理解する場所ともなっています。

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2015.06.05 / Top↑
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去る週末、福島県いわき市と相馬市、それに宮城県女川町へ行ってきました。
その途中、全線で運転を再開したばかりの仙石線にも乗ったのですが、十代半ばの頃からこの風光明媚な路線に親しんできた者として、同線の完全復活には感極まるものがありました。
東松島市内の高台での宅地造成など、まだ復興に時間を要するところもありますが、同じく開業したばかりの仙石東北ラインとあわせ、同線がこれからも大きな役割を果たし続けることを願っています。


さて、来る6月6日・7日の両日、福岡市で詩歌を中心とした同人誌即売会「第4回福岡ポエイチ」が開催されます。

私・高森は、今年も両日出店します。ブース番号は2日とも‘a-9’(ただし、ブースの位置は6日と7日で異なります)。

2日目は、昨年同様、学部時代の友人がブースでの販売を手伝ってくれる予定なのですが、この友人も当日が楽しみだと言っております。

福岡では今年10月25日に「文学フリマ福岡」も開催されることになっており、今回のポエイチではその事務局の方々もブースを開設されるのだとか。ちなみに、こちらの文フリ福岡についても、私は出店を申し込む予定です(当初は所属学会の年次大会と日程が重なっていたのですが、幸い、学会の開催日程が1週間早まってくれました)。

ポエイチも今回で4回目の開催となり、出店申請者にキャンセル待ちが出るようにもなったそうです。2日間ともに、昨年以上の盛会となるよう願っています。

今回の私の頒布作品は以下の3つ。基本的には4月の文フリ金沢、5月の文フリ東京と同じ品揃えとなりますが、3作品中2作品は、ポエイチでは初頒布となるものです。

『異邦人の土地』(2015年作)…頒布価格:500円 (新刊)
1979年、隣国カンボジアに攻め込んだベトナム軍の兵士、グエン・ズン・アンは、首都プノンペンで学校の校舎らしき建物と、その建物の内外に散らばる無数の惨殺死体という光景を目にする。そこは、当時のカンボジアでは‘S-21’と呼ばれ、今日では「トゥール・スレン収容所」として知られる、政治犯強制収容所であった。
収容所内に入ったグエン・ズン・アンは、そこで散乱する死体を前に立ち尽くす一つの人影を目にし、その人影に銃を向ける。だが、その人影の主たる男は、カンボジア人でもベトナム人でもなかった。彼は、中国人だったのである。
なぜ、解放直後のカンボジアの強制収容所に、中国人の男が立っていたのか…それは、20世紀後半のカンボジアを諸外国の者たち、即ち「異邦人」たちが翻弄し、時に蹂躙してきた結果であった…。
40年前にカンボジアで起こった大量虐殺を2人の外国人の視点から捉え、大国の利害の交差路としてのインドシナ半島を描き出します。

『賢人支配の砂漠』(2014年作)…頒布価格:300円
東京の大学で教鞭をとっていた在日韓国人三世の経済学者・鄭太植は、『在日』をめぐる左右両翼の論争に嫌気がさす中、中東・ドバイの大学から赴任のオファーを受ける。日本国内に留まることへの疲労感もあってそのオファーに応じた太植だったが、遊牧民の伝統を残すアラビア半島の部族社会は、やがて彼に「支配」をめぐる新たな考えを抱かせるようになる。
昨今の「アラブの春」にもかかわらず、絶対君主制を維持するアラビア半島諸国。その内面に目を向けることで、支配・統治のあり方の多様性を描き出します。

『半島と海峡の狭間で』(2007年作/2014年改訂)…頒布価格:300円(ポエイチ初頒布)
1970年代初頭、韓国大使館員として中華民国・台北に赴任したキム・ギョンナムは、当地で日米両政府が大陸・中華人民共和国に接近し、台湾の国際的孤立が高まるという緊迫した状況に直面する。国民党一党独裁下の台湾と、軍事政権下の韓国。反共を国是とする両体制を行き来する彼は、しかし同じ資本主義陣営に属するはずの日米が大陸の共産党政権へと接近していく中、自国の、そして赴任先の政治体制に少なからぬ疑問を抱く。やがてその疑問は、彼の外交官としての立場を危ういものにしていき…。
冷戦体制下の1970年代、日米両国と同じ西側陣営に所属していながら、大陸中国との修交という選択肢をとることのできなかった反共分断国家・韓国の視点を通じ、東西両陣営の対立がアジアに残した痕跡を描写した作品です。

多くの方のお越しをお待ちしております。
2015.06.01 / Top↑