FC2ブログ
来月(2月)の後半、メリーランド州ボルティモアで開かれるISA(International Studies Association)という学術団体の第57回年次大会で研究発表を行うため、訪米します。

私は本来、東アジア、中でも韓国の政治を専門としており、大学院生の時に留学した先も韓国だったのですが、今年は2月にボルティモア、12月にロサンゼルスで学会発表を行うほか、所属先が行っているコネティカット州の大学との交流プログラムにも従事するなど、例年になくアメリカの学術機関と深く関わることになっています。

さしあたり現在は、ボルティモアでの研究発表に向け、発表用資料を作成し終えたところ。

State-led-Development-001.jpg
発表用のパワーポイント・テキスト。室内を暗くしても見やすいデザインにしたのですが、よく考えたら、農業政策についての発表で雪をイメージしたデザインというのは変ですね…。

さて、日本時間の今朝、そのボルティモアでの学会を主宰するISAから、現職・次期・前職の会長、および事務局長の連名で以下のようなメールが届きました。

isa2017announcement-001.jpg

ISAは、国際関係や国際開発の分野では北米最大の学術団体。その年次大会には、世界中から参加者が集まります。そうした会議だけに、今回、米新政権が施行したイスラム圏7か国に対する入国制限措置に関して、「多くの問い合わせを頂いています」とのこと。

この件についてISAは、「今回の措置で会議に出席できなくなった方には参加登録料(※)を全額払い戻し、かつ、次年度以降の大会でも、出席キャンセルに伴うペナルティを一切課しません」とした上で、以下のように綴っています。
(※=学術研究の業界では、国際会議に出席する場合、通常200から300USドル程度の参加登録料を払うのが万国共通なのですが、大抵の場合、その登録料は返金不可と設定されています)

「今回のアメリカ政府の措置に抗議すべく、会議をボイコットすべきとの意見もありますが、会議は通常通り開催します。それは、我々が政治的に中立な非営利団体であるためであり、また、今回の政府の措置についても、会議の席で議論して頂きたいからです」(要約)

私自身は、今回アメリカ政府がムスリムを多く抱える国を名指ししてとった措置は、これまで欧米諸国が払ってきた「『テロとの戦い』を、絶対に『ムスリムとの戦い』に転嫁してしまわない」という努力を踏みにじるものであると考えています。

近年、相次いでISのテロ攻撃を受けた中にあって、フランス政府首脳陣が「我々はテロリストと戦うのであって、ムスリムを敵とするのではない」と明言したことと対比させれば、今回のアメリカ連邦政府の措置が、80年以上も前の、そして弱小国家であったからこそ許された孤立主義へと回帰する、あまりに無責任な行動であることは明らかです。

まさに、上述した私の見解がそうであるように、民主主義社会では、ある極端な意見が出ると、必ずそれに対する反論が出ます。その時、両者を議論させる場を提供することも、アカデミズムの仕事の一つ。ISAは今回、その仕事を忠実にこなす用意があると表明した形です。

アカデミズムは、直接的に物やサービスといった付加価値を生み出す要素が希薄な業界です。それだけにこの業界は、研究上の蓄積や、研究者が持つ見識、あるいは新たな発見を社会に還元し、そしてそれらについて多くの人々が「考える機会を提供」することに主たる存在意義があるのですが、今回、国際関係・国際開発の分野で北米最大となる学術団体がそのアカデミズムにおけるプロ意識を見せたことに私は、一種の「若さ」ゆえに時に迷走するものの、やはりアメリカには「脈がある」と強く感じました。
スポンサーサイト
2017.01.30 / Top↑
IMG_20170125_154345.jpg
昨日から明日までの3日間、沖縄を訪れております。一週間前に北海道のアイヌ文化施設を訪れたのと同様、来年度の担当授業で「アジアの文化的、民族的マイノリティ」に触れることを想定した準備の一環です。

鹿児島以北と異なる文化的特徴を持つ沖縄は、北海道と同様、国境とアイデンティティの境界が一致しないことを示す端的な例。そのことを踏まえつつ、昨年10月に続き、3ヶ月ぶり通算5回目の沖縄入りとなったのですが、私にとって当地は、昨年刊行の拙作『大陸と海洋の交差路』で主題とした場所であり、(決して詳しいとは言えませんが)アイヌに比べれば多少は馴染みのある場所。そういった事情もあり、今回は「宗教文化」に焦点を絞りこみ、那覇周辺を見て回りました。

IMG_20170125_143036.jpg
こちらは、観光地として超定番であり、私も拙作の舞台として登場させた首里城公園にある、園比嘉武御嶽(そのひゃんうたき)という祈祷施設。琉球王国の時代、国王や官吏、あるいは農民までもが、こうした御嶽(うたき)と呼ばれる施設で祈祷を行い、生活や旅行の安全を願うという土着の信仰を持っていたのだそうです。

IMG_20170125_153513.jpg
他方、周知のように琉球王国は日中双方と交易を行っていました。その中で仏教と神道も国王によって取り入れられ、太平洋戦争中の破壊とその後の再建を経て、今でも沖縄本島には複数の神社が建てられています。写真の神社は、那覇市立病院の近くにある末吉宮という神社。石垣などに沖縄独特の建築様式が見られますが、拝所が定められ、賽銭箱も置かれた、れっきとした神社です。

このように、沖縄では、本州や九州以上に様々な信仰の対象が合わさった、独自の宗教文化を発達させてきたところがあります。こうした切り口からも、一つの国の中に複数の言語や宗教、エスニシティが共存することはむしろ常識だということは指摘できるかもしれません。(ちなみに、宗教アイデンティティに関して言えば、私自身も、プロテスタント教徒と、日本国内ではマイノリティに属します)

何度足を運んでも興味関心の尽きない沖縄。明日午前那覇発のフライトで東京に戻る予定ですが、いずれまた、遠からずして那覇行きの航空券を買うことになると思います。

なお、本記事で言及した『大陸と海洋の交差』は、2月12日に静岡市で開かれる即売会、静岡文学マルシェでも販売する予定です。同イベントに参加予定でご関心のある方は、お手にとっていただけますと幸いです。
2017.01.25 / Top↑
IMG_20170116_113843.jpg
昨日、今日の2日間、北海道へ行っておりました。昨年7月の文学フリマ札幌以来、半年ぶりの北海道入りです。

来年度、私は自分の担当授業の中で「アジアにおける文化、エスニシティのマイノリティ」を取り上げる予定なのですが、長らく開発政策や産業政策、貿易政策といった政治経済学の研究を行ってきた私にとって、マイノリティなど社会政策は、実はあまり強くない領域。そういった事情ゆえ、今週の北海道、来週の沖縄と、2週間かけて自国のマイノリティについて、現地で学ぶ時間をとることにしました。

北海道で学ぶ対象は、当然、先住民であるアイヌ。今回はアイヌについて情報蓄積の多い旭川を訪れ、

IMG_20170116_144201.jpg
旭川市博物館と、

IMG_20170116_154459.jpg
川村カ子ト•アイヌ記念館へ行ってきました。

一般にアイヌは、農耕文化とされる本州以南に対し、狩猟民族と理解されています。実際、「土地の神様」といった発想は希薄な一方、動物や資産などの物品に神が宿るという意識は強いようで、それは時代が下り、社会秩序が形成されるにつれ、財宝など動産の所有を威信と結びつける(より多くの財物を有する=それだけ多くの神が宿った物に守られる)価値観へと発展していったのだそうです。

社会的マイノリティを論じる際にしばしば用心を要するのが、「マイノリティ=同化の対象」という発想に対抗せんとするあまり、「マイノリティ=正しい存在」という善悪二元論的な思考に陥ってしまうこと。これはエスニシティに限った話ではなく、セクシャリティや障害者についても言えることなのですが、今回訪問した2施設は、14世紀にアイヌが大陸で収奪を行い、元と武力衝突に至った経緯や、アイヌ社会の規範に反した者への社会的制裁といった点についても丁寧な説明をしていました。

残念ながら、私がこれまでに住んだ日本および韓国という2つの国は、国境とエスニシティの分布が一致しないことへの理解が、今なお不十分な状況にあります(ちなみに、韓国にもエスニック・マイノリティとして、約15000人の華人が住んでいます…が、そのことが僅かながらも社会的認知を得るようになったのは、ごく最近の話です)。

無論、私たちの生活は、国民国家と深く結び付いており、かつ国家が提供するサービスや保護に大きく依拠しています。そのため、徒に「国家」を否定することは極めて現実性を欠くのですが、他方、国家という単位を絶対視してしまうことも、現実的とはいえません。この点、来週の沖縄でのフィールドワークも踏まえつつ、分かりやすく講じられるよう準備をしていきたいと思っています。

<おまけ>
IMG_20170116_104531.jpg
今回、札幌から旭川まで乗った785系、特急「スーパーカムイ」。

1990年に「スーパーホワイトアロー」としてデビューしたこの車両は、以来四半世紀に渡り、北海道電車特急の第二世代として活躍を続けてきましたが、来る3月のダイヤ改正以降、後継車種に座を譲り、退役が始まります。

私にとっては中学生の頃から北海道旅行のたびに親しんできた車両であり、寂しい限りなのですが、他方、この3月のダイヤ改正については個人的に嬉しい話もあります。

このダイヤ改正では、道央特急の運行体系が大幅に改編され、札幌・旭川間の特急列車が「カムイ」「ライラック」の二本立てとなります。このうち「ライラック」は、列車名として10年ぶりの復活。中高生の頃、北海道旅行でこのリラの名を冠する列車に何度も乗った者としては、懐かしさがこみ上げてきます(ちなみに、リラの花言葉は「青春の思い出」です)。依然として厳しい経営状況にあるJR北海道ですが、この新生「ライラック」が道央都市間輸送の担い手として、多くの人々に利用されることを願っています。

次の私の北海道入りは、今のところ7月上旬、文学フリマ札幌に合わせての訪問。その際には、是非とも復活した「ライラック」に乗りたいと思っています。
2017.01.17 / Top↑
明けましておめでとうございます。

昨年、私は本業で大学の正規授業を初めて担当するなど、大きな変化を経験しました。その中で、同人誌即売会を中座しなければならない場面もあったりしましたが、そうした状況にもかかわらず、多くの読み手の方に拙作をお読みいただくことができました。改めて御礼申し上げます。

今年、2017年は、私が中学2年の初夏、太宰治に触発されて小説を書き出してから、ちょうど20年という節目の年となります。

現在17万字強まで書き進めている新作は、私にとっては初となる、ヨーロッパを主たる舞台にした小説。多くの方にご満足いただける作品にしたいと思っています。

なお、私は現在、新年の休暇でバンコクに来ています。

2017010119340000.jpg

去る10月にプミポン前国王が逝去され、王宮周辺はこのように、前国王の肖像画にモノクロのリボンをつけるなど、追悼一色となっています。

私も、フアランポーン駅の記帳台で記帳しました。

以前にも本ブログに書きましたが、タイの安定と繁栄に前国王が果たした役割は小さくありません。この国の人々が、その功績の上に、新たな歩みを重ねていくことを、心から願っています。
2017.01.02 / Top↑