FC2ブログ
IMG_20180414_135858.jpg
4月12日から16日まで、学会発表のため、ラトビアの首都リガを訪れておりました。昨年12月のカリフォルニア州リバーサイド以来、4か月ぶりの学会発表となります。

今回出席した、ラトビア大学での国際学会Conference of Baltic Alliance for Asian Studiesは、バルト三国のアジア研究者が学際的に集まるという性質のもので、私にとっては昨年10月のローマでのInternational Conference on Food Studies以来の、学際色の強い会議となりました。

国内、海外を問わず、学会は通常、学問分野を絞ると「狭いが深い」議論が可能になり、学際的になると「浅いが視野の広い」議論が可能になるもの。今回の発表はImpact of Public Support on Farm Lobby in Korea and Japanと題し、日本で農協の政治運動がメディアから「抵抗勢力」扱いされ、世論の批判を受けてきた一方、韓国の農民団体による政治運動が学生や労組の支持を受けてきた点を対比•分析したものだったのですが、発表内容に対して社会学の立場から活発に質問が出るなど、有意義な時間となりました。

さて、周知のようにラトビアは、エストニア、リトアニアと並び、かつてソビエト連邦に組み込まれていた国。現在、同国ではソ連時代は、一般に「暗黒時代」と見なされており、公の場での旧ソ連国旗の掲揚を規制する法律すら存在します。

IMG_20180415_133828.jpg
リガ旧市街にある軍事博物館。こちらの展示でも、20世紀半ばのバルト三国は、スターリン時代のソ連およびナチス•ドイツという全体主義体制に不本意ながら占領されていたものと位置付けられています。

DawSQJzWkAAqtHP.jpg
しかし、歴史的にロシアと縁の深い国。リガ旧市街にはロシア劇場という、国立オペラハウスとは別にロシア語のお芝居を専門に行う劇場もあります。(ちなみに、私が訪れた日の演目はシェイクスピアの『リア王』。なかなか見応えのあるお芝居でした)

IMG_20180415_180147.jpg
リガ郊外へ足を伸ばすべく国鉄に乗れば、走っている電車は旧ソ連の標準規格車両•エレクトリーチカ。モスクワの地下鉄や近郊電車と同じく、西欧の中距離電車では30年前に廃れた釣り掛け駆動方式のモーター音が床下から響いてきます。

シェンゲン協定加盟国であり、ユーロの流通する国である一方、ロシアの要素も少なからず残る国。今回初訪問となったラトビアでは、大変新鮮な経験をさせていただきました。
スポンサーサイト
2018.04.18 / Top↑
13日から16日までの日程で、学会発表のため、ラトビアに来ています。所属先では先週、新年度の授業が始まったばかり。年度始めで何かと忙しいこの時期、個人研究関係の海外出張に送り出して下さった関係者の方々には御礼申し上げたいと思います。

さて、この度、所属学会の発行するジャーナルに、私の査読付き論文が掲載されることになりました。

「自由貿易体制下の韓国における国内農業保護政策の政治的背景:間接ロビイングの視点から」『北東アジア地域研究』第24号、pp. 1-16、2018年

本論文は、2004年の対チリを皮切りに、アメリカやEU、中国などと相次いで自由貿易協定(FTA)を結んできた韓国政府が、その一方で国内農業の保護に多額の予算を投じてきたのは何故かを問うものです。

韓国は、海外市場に大きく依存する経済構造を有している一方、国際競争力をほとんど持たない農業部門を国内に抱えています。日本もこの点は同様であり、そうであるがゆえに日本は、2010年代に入るまで貿易自由化の推進に及び腰なところがありました。海外市場への輸出を拡大すべくFTAを結べば、他国から安い農産物が流入し、国内農業がつぶれるのは火を見るより明らかですから。

農協をはじめ農業者団体も、この点を強調し、貿易自由化には強く抵抗してきました。

韓国でも、農業関係者は貿易自由化に強く抵抗しています。

他方、韓国政府は、FTAを結ぶという点では一切の妥協がないものの、FTA締結後の国内農業を保護するべく、総額数兆円規模という巨額な予算を設けています。

この巨額な予算が設けられた背景として、間接的なロビー活動、すなわち、農業関係者が貿易自由化への反対を世論に訴えかけ、それに呼応した世論が、政府に対し、農業保護のために財源を割かせる圧力として作用した…というのが本論文の主たる内容です。

議員や大統領に直接圧力をかけるのではなく、世論を喚起し、動員することで政治的利益を実現させるという「間接ロビー活動」は、近年、ヨーロッパ政治で注目されるようになった概念です。住民の直接選挙で選ばれる訳でもないEUの高官が、圧力団体の影響を受けてしまうのは何故か、という点から導き出された概念ですが、本研究は、この概念がアジア地域の政治にも援用できることを示唆しています。

本年夏までに、全国の研究機関や大学図書館に配架される予定です。
2018.04.16 / Top↑
先日、18年ぶりに根室の納沙布岬へ行ってきました。

IMG_20180330_144503.jpg
当日は天候にも恵まれ、海の向こうに国後島を見ることもできました。

周知の通り、国後島を含む北方領土は現在、ロシアの実効支配下にあります。無論私も、北方領土問題をめぐる日本政府の見解は承知しており、それ故に3年ほど前、北海道庁で北方領土返還を求める署名運動に名を連ねています。しかし、この海の向こうで「ロシア人の生活」が営まれていることもまた現実であり、普段大学の政治学講義で国民国家の重要性をしつこいほど強調している身としては、不思議かつ複雑な心境にさせられるところがありました。

さて、本年の新作は、中国と並び、このロシア…より正確に言えば、1980年代後半、ソビエト連邦と称していた頃の同国を主たる舞台とした作品となります。この度、その新作が脱稿しましたので、以下、ご案内致します。


『廃墟の中で』


1980年代後半、北京の大学へ進学した林美小は、長らく中断されていたソ連への学生派遣事業が再開されたとの報に接し、同事業に応募する。審査に見事合格し、モスクワの大学へと赴く美小。そこで彼女が目の当たりにしたのは、ペレストロイカの下で政治改革が進み、学生運動も芽生えつつあるソ連社会の姿だった。原発事故や兵器工場周辺の公害など、それまで隠蔽されていた事実を明るみに出そうとする友人たちを間近で目にする美小。しかし、1年間の派遣を終えて帰国した彼女を待っていたのは、政治改革を拒む祖国の姿だった。義憤に駆られ、民主化を求める学友たち。やがて彼らと権力者との対立は、初夏の天安門広場で頂点に達する…。

冷戦末期、社会主義体制をとってきた中国とソ連は、その制度疲労に直面し、改革に着手します。しかし、両国は互いに大きく異なる制度改革を進め、そしてそれは、社会主義体制の堅持と崩壊という、決定的な差異を各々の体制にもたらしました。本作は、その変動の時代を、両国を跨いだ視点から描いた小説です。大きく異なる歩みをたどった中国とソ連。しかし変動の時期にあって両国には、共に変化を求め、立ち上がった人々の姿がありました。歴史の中に封じられようとしている彼らの姿へと、思いを馳せていただければ幸いです。

基本価格は500円とし、今後、5月の文学フリマ東京、および金沢、6月の静岡文学マルシェ、7月の文学フリマ札幌にて頒布いたします。これらイベントへお越しの際は、是非お手にとっていただければと思います。
2018.04.02 / Top↑