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先週の後半、およそ7年ぶりにグアムへ行ってきました。

成田からおよそ3時間あまりで行けるこの島は、時間・予算の両面で日本人には行きやすいリゾート地であると同時に、サイパンと並び、日本人には手軽に行けるミクロネシア文化圏の土地でもあります。

50州に属していないために連邦への納税義務はなく、内政において自治が行われてきたとはいえ、その軍事的重要性から長らくアメリカ領であることが強く意識されてきたグアムですが、近年に入り、ミクロネシアのチャモロ文化を復権させようという取り組みが、徐々にではありますが官民で見られつつあります。

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昨年、政府の所在地でもあるハガニアに、議会の議事堂と隣接する形でグアム博物館が開館しました。

現状では、2階建ての館内のうち、展示品が並んでいるのは1階だけという状況ですが、日本や中国、韓国といった東アジア文化とも接点のあるミクロネシア文化に関連して、絵画などを見ることができます。

かつてはスペイン支配を受け、その後アメリカが施政権を獲得したグアムでは、ローカルのチャモロ文化は長らく社会的に周辺化された存在であってきました。しかし20世紀末以降、地名を英語やスペイン語のものからチャモロ語由来のものへ切り替える例が見られたりと、ミクロネシア文化圏土着の要素を見直す動きが少しずつ出てきています。

こうした動きは、無論、マイノリティへの同化政策がもたらした負の結果に向き合い、多文化の共存に向かおうとする20世紀後半以降のアメリカ社会の趨勢に属するものといえます。

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こちらの施設は、去る2月、ボルティモアでの学会発表に際して訪れたワシントンD.C.のアメリカン・インディアン博物館。合衆国がネイティブ・アメリカンの追放、封じ込め、ないし同化政策を行ってきた過去の体制と向き合いつつ、米州に古くから住んできた人々の価値観、誇りの源泉を学ぼうという博物館です。

国民国家の内部を同質化しようとしてきた過去を見直し、社会の多様性を認め合う。今の時代、そうした考えを根本から否定する人はごく少数でしょうし、「彼我の違いに寛容でいよう」という呼びかけには、大半の人が賛同することでしょう。

しかし、価値観の違う人間同士が共存するということは、言い換えれば、それまで同質的な人間同士の間では暗黙のうちに「常識」として通用してきた決まりごとが、異なる「常識」を持つ人々との接触の増加により、通用しなくなることを意味します。アメリカ本土も、グアムも、こうした多様性を認めることの「コスト」にしばしば立ち止まり、考え込み、場合によっては悩んでいるところがあります。

多文化社会をめぐるこうした現実をきちんと理解できている人が、日本にどれだけいるか。ここ数ヶ月、国内外で様々な人と会う中で、そういった懸念を耳にする機会が何度もありました。

文化的に異質な人々との接触の増加は、自ずと「非明示的な決まりごとは一切他人に通用せず、他人を規則で縛るのであれば、その規則は全て文字に起こさなければならない」という行動様式を社会のメンバーに要求し、そして「それを施行しなければ具体的かつ明らかな損害・損失を生むという場合でない限り、規則で他人を拘束してはいけない」という基準を強いることになります。

一見緩やかそうに見えて、しかし韓国や中国と比べても非明示的、かつ「それがなければ明らかな害悪が生じる」という根拠の薄い決まりごとにがんじがらめにされている日本が、そうした多文化共存社会のルールから程遠いところにあるという点は、国外で仕事をしたり、非日本人と一緒に仕事をする中で、私もしばしば感じます。

「日本という国は、百貨店ならまだしも、コンビニの店員が暇な時にスマホのメール操作をやっているだけで『不真面目だ』と客が怒り出す国。その店員が顧客の購入商品を壊したわけでも、つり銭を詐取した訳でもないのに…。この国がそうした点を改めないまま、いずれ人口減が深刻化し、外国人労働者に大きく依存しなければならなくなったら、欧米とは比較にならないくらいの差別や排斥運動が起こるかもしれない」

そう懸念する声も耳にしたことがあります。

無論、人間という生き物は大方したたかですから、社会の構造が変化し、従来の不文律的な常識が通用しなくなれば、(決して批判的な意味ではなく、むしろ良い意味で)しれっと自分の中の価値基準を書き換え、新たな社会環境に適応していくことでしょう。

ただ、そうした環境への適応は、より早い段階で、よりスムーズに進めていくのが賢明というもの。その意味で、日本の人たちは、「多様性を認め合う」ということが、「異質な価値観と恒常的に触れ合うフラストレーションを乗り越えなければならない」ことを前提にしている点、これまで以上に意識していいのかもしれない…久方ぶりに訪れた常夏の島で、様々な肌の色を持ち、様々な訛りの英語を話す人たちと話しながら、ふと、そんなことを感じました。
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2017.11.13 / Top↑
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